「衝突被害軽減ブレーキは万能ではありません!」
国土交通省が「衝突被害軽減ブレーキは万能ではありません!」という啓発ビデオをYoutubeで公開しています。
ビデオでは、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)が十分に働かない条件についての実験映像と解説が行われています。
紹介されている状況をまとめてみました。
1 規定速度
衝突被害軽減ブレーキには動作する速度範囲が指定されています。最近モデルチェンジした車の多くは時速100㎞近くまでカバーされている場合が多いのですが、時速30㎞未満でないと動作しないタイプのものもあります。主に街中や渋滞時の追突防止に役立つタイプですね。他にも、速度上限はメーカーによってバラバラです。
映像にもありますが、この規定速度を超えて走行している場合、そのまま衝突します。
2 夜間、正面に太陽がある、夕暮れの大雨など
衝突被害軽減ブレーキの反応が遅れたり、前方の障害物を見失ったりしてほとんど減速せず衝突してしまいます。
「人間にとって厳しい条件は、衝突被害軽減ブレーキシステムにも厳しい」と考え、ゆっくり走る必要がありますね。
3 路面が滑りやすい、坂道でブレーキが効きにくい
ほとんどの衝突被害軽減ブレーキシステムはドライバーがシステムに頼り切らないようにぎりぎりまで自動ブレーキをかけません。そのため路面状況が悪いと止まり切れずに衝突します。
決して「ぶつからない車」というわけではないことを、肝に銘じておかなければいけませんね。
4 その他いろいろ
動画内ではほかに、歩行者の服や自動車の色などによっても作動しない場合があることが指摘されています。
勝手に作動することも(!)
動画ではうまく作動しない条件に焦点を当てていましたが、衝突被害軽減ブレーキの不具合で最も多いのが「勝手に作動する」で全体の73%というのも衝撃的です。
勝手に作動してしまった場合、どうすれば自動ブレーキを解除できるでしょうか。
多くの衝突被害軽減ブレーキシステムでは、機能をOFFにするスイッチが用意されています。
また、トヨタやダイハツのシステムの場合、自動ブレーキ作動中にアクセルを強く踏み込むと解除されます。
システムによって異なりますので、取扱説明書を確認してください。
メーカーが公開している注意事項
動画は国土交通省がまとめたものですが、他にはどのような注意点があるのでしょうか。メーカーのホームページをチェックしてみました。
システムによって違いはありますが、以下のような条件では作動しないことがあることを覚えておくと万が一の時に慌てずに済みそうです。
動作しない/センサーが検知しないことがあります
- 横からの飛び出しや割り込み
- 2輪車やバイクなど
- 橋梁の鉄骨など、周囲に電波を強く反射するものがある場合(ミリ波レーダーを使っているタイプ)
- 歩行者の身長が1m以下または2m以上の場合
- 傘をさしていたり、服装などによって歩行者の頭や手足などが隠れているとき
- 歩行者が歩いている姿勢ではないとき
- 歩行者が集団でいるとき
- カラーコーンなどのプラスチックの障害物(ミリ波レーダー)
- ガラスなど透明な壁(カメラセンサー)
自動ブレーキが解除される場合
- ブレーキを踏む、アクセルを踏み増す、踏み込む、急ハンドルや大きくハンドルを切るなど。(ドライバーが回避操作中と判断され、自動ブレーキが解除されます)
- 自動ブレーキで停止後、1~数秒で解除されます。(クリープで動いたりするのでドライバーがブレーキを踏んでください)
参考ページ
https://toyota.jp/safety/tss/
https://dport.daihatsu.co.jp/information/sumaashi/faq/
http://www.honda.co.jp/hondasensing/feature/cmbs/
いかがでしょうか。「思ったより頼れない」というのが正直な印象ではないでしょうか。
動画内でも「運転を補助するもの」と強調されていますね。
とはいえ、通常の安全運転において、危険を察知する「もう一つの目」としての役割は期待できます。まだまだ「主役は人間」です。ドライブを楽しみましょう。